山形県東根市を走る国道13号線。大きな幹線道路から脇道へ入り、少し進むと、民家やお店などが並ぶ街並みが見えてきます。その一角にあるのが、鮮やかなオレンジ色のシャッターが特徴のゲストハウス「The Move STAY」です。
運営するのは、合同会社The Move代表の安彦奏汰さん。現役の高校生です。
「起業したい」という夢を持ち、実現した安彦さんに、そのチャレンジの軌跡を伺いました。
もともと、「自分で稼いでみたい」という思いがあり、父の勤める新庄東高等学校に新設されたアンレプレナーシップ教育(起業家育成)のコースに興味を持ちました。入学当初は、特にどんな分野で起業したいというような具体性はありませんでしたが、将来的に「自分で何かを起こしてやってみるのは面白そうだ」と思うようになりました。
村山市で地域事業を行っている末永玲於さんと、師匠と仰ぐ新関燿さんとの出会いが大きいです。高校2年生のインターンシップで、先生に「面白い人」として紹介されたのが末永さんでした。インターンシップを受け入れてもらい、まちづくりの打ち合わせや地域の人が集まる場に同席しました。末永さんに紹介される形で会ったのが新関さんでした。新関さんは村山市でゲストハウスを3棟運営されています。実際にゲストハウスを訪れて、東京や沖縄からの宿泊客との交流を経験したことで、「ゲストハウスって面白そう」と考えるようになりました。この時のインターンで、いい人にいっぱい出会ったことは自分の中で重要な体験だったと思います。
まず、ゲストハウスをしたいということを家族で話しました。すると、母もゲストハウスに興味があって、既に少し調べていたということが分かったんです。そこから、父も交えて家族でやってみようということになりました。
それから、ゲストハウス以外にも、「おばあちゃんの辛味噌」販売と、元教師の母が開く「塾」もやってみたいと話が発展し、その3つを柱とした事業として家族で話し合うようになりました。計算ソフトに必要事項や費用などを書き出して、毎晩「Move会議」です笑。
次に手を付けたのは物件探しでした。条件は、1階で辛味噌製造と塾ができて、2階部分が宿泊できるところ。母と一緒にいろいろ探しました。そして、縁もあって出会ったのがこの物件でした。もともとは社員寮だった物件で、部屋数があり、トイレも複数ある、ぴったりな場所でした。
物件が決まってからは、融資とか、融資に向けて会社をつくるだとか、本格的に「起業」の動きになりました。若者支援コンシェルジュの若者サポーター制度を使って新関さんに相談もしながら、間取りや工事についても決めていきました。

そうした具体的な動きの他に、母と一緒に新関さんのゲストハウスで「修行」もしました。昨年の年末から今年の年始にかけてですね。2~3週間ほど、掃除の仕方やチェックアウト時の対応など、実際の宿の仕事を経験しました。新関さんは3棟を運営しているので、一か所で洗濯している間に別の物件を掃除するなどの効率的な動き方も学べました。本当に大事な期間で、この経験があるから、今もスムーズに掃除ができています。
予約が入ったときは嬉しかったですね。一組目のお客さんには会うことができて、一緒に写真を撮りました。「一組目なんですよ」と言ったら、すごく喜んでくれて、こっちも嬉しかったです。メッセージを書けるノートを置いているのですが、文字での交流も楽しいですし、予約サイトで満点評価をもらうと、実感というか「よかったな」と感じます。
オープン前の8月1日には「完成内覧会」を行い、自分たちの知人以外にも、地域の人や、大家さんの知人など、家族だけじゃ対応できないくらいたくさんの方が足を運んでくれました。来場者は50名以上だったと思います。この場所が地域が元気になるきっかけになればいいなと思っているので、嬉しいです。

僕が大事にしているのが、「動き」と「いろんな人と会うこと」です。すべての出会いがチャンスになる、をキーワードにして、まず出会うこと、人と会って話すことを大事にしています。その意味も込めて、社名を「The Move」と付けました。実際に、インターンシップから始まって、この1年で約400枚は名刺を配ったと思います。
ゲストハウスに興味を持ったのも、宿泊客とのコミュニケーションに面白さを感じたからでした。なので、ゆくゆくは、自分がお客さんと直接コミュニケーションをとって、地元の方とお客さんとのつながりを作っていけたらと思います。他にも、地域の農家さんとお客さんをつないだり、地域を盛り上げるイベントも開催したりしてみたいと思っています。
人との出会いはチャンスというか、すごい機会だなと実感しています。そういう感動をもたらせる人になれたらと思います。まずは、ゲストハウスのお部屋を開けたときに「わっ」となってもらう感動ですね。お部屋でリラックスしてもらって、お客さん同士が出会って、塾に来た地域の子どもたちと出会って、と出会いの輪が広がっていったらいいなと思います。
直近では、「おばあちゃんの辛味噌」を売り出すことと、母の塾を開くためにリリースイベントも企画中です。塾生は既に募集をしています。
相談したことで、「やりたいこと」がより現実的になりました。起業家精神はあるけど、実際起業ってどうするのかわからなかったし、何を準備したらいいのか、そもそもゲストハウスって何なのかも最初はぼんやりしてたんです。でも、経験者に話を聞いたことで、自分の稼ぎとしてやっていくにはどういう事が必要なのか、リアルにわかりました。
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奏汰さんの宿と、お母さんの塾、おばあちゃんの辛味噌、そしてDIYが得意なお父さん手作りのベッドもあり、たまに手伝ってくれる弟妹がいる。家族で営む温かい宿だなと、お話を聞いていて感じました。
安彦さん一家の挑戦は、若者支援コンシェルジュとしても若者サポーターを通して見守ってきました。こうして実現し、地域から温かく見守られているのも、安彦さん達の頑張りと人柄のように思います。
取材にあたり、安彦さん一家を見守ってきた若者サポーター 新関燿さんにもコメントをもらいました。
新関燿さん
出会ってから1年間、相談と仕事体験の双方でサポートを行いました。奏汰くんは行動力と意思がはっきりしていて、素直に学ぶ姿勢が印象的でした。高校生という真白さがこれからどう染まっていくのか、楽しみと可能性を感じています。私自身も2020年の学生時代にサポート制度を活用しサポーターの背中を見て育ってきたので、その影を重ねながらの1年間が楽しかったです。起業はスタートでここから嬉しい事も悩む事もきっとありますが、それを乗り越える土台づくりができたと思います。息子、母、父、祖母と家族全員のスキルと思いを原動力に、これからも頑張ってほしいです!応援してます!
オープンして約一か月。まだまだチャレンジ中の安彦奏汰さん。今後どんな出会いがあるのか楽しみですね。
場所:山形県東根市神町北2-20-28
料金:1泊30,000円~ ※1日1組限定
WEB:https://sites.google.com/the-move.net/stay/home
ご予約:https://www.airbnb.jp/rooms/1708521003808345049 (airbnb)
※詳しくは公式ホームページ・予約サイトをご覧ください。
取材:かいな


















